脊柱管狭窄症の再手術|再発の原因と再手術率

脊柱管狭窄症の手術を受けたあと、しびれや痛みが戻ってきた方へ。再手術が必要になる原因と、改善が見込めるかどうかの考え方を研究データをもとに解説します。

秋山 典宏 医師(長岡京病院 脊椎センター長)

脊椎センター 担当医:秋山 典宏(脊椎センター長)

日本整形外科学会認定 整形外科専門医

脊椎センターの診察日:火曜・金曜 午前9:00〜12:00(受付開始8:00)

脊柱管狭窄症の手術後、どのくらいの人が再手術になるのか

手術後に症状が再び現れ、再手術を検討することは、決して珍しいことではありません。国内外の調査では、次のように報告されています。

韓国・全国データベース
11,027人(文献1)
1年 7.2%/3年 11.2%/5年 14.2%/10年 22.9%(推計)
米国メイン州
手術を受けた77人・10年追跡(文献3)
10年 23%
スイス8施設
328人・3年追跡(文献2)
除圧術のみ 11.3%/除圧+固定術 13.9%(3年・両者に統計的な差はありません)

初回手術でどの術式が選ばれるかによっても違いがあります。無作為化比較試験17件をまとめた解析では、棘突起間スペーサーを用いた場合の再手術率は28%、除圧術のみでは7%と報告されています(追跡期間は研究ごとに異なります/文献4)。術式は病状に応じて選択されるため、この数値だけで優劣を判断することはできません。

これらの数字は、初回の手術が失敗したことを意味しません。神経の圧迫を取り除いても、加齢に伴う背骨の変化はその後も進んでいくためです。

再手術が必要になる主な原因

再び症状が現れる背景には、いくつかの異なる原因があります。原因によって、再手術で改善が見込めるかどうかが変わります。

同じ部位が再び狭くなる(再狭窄)

除圧術で広げた部分に骨や靱帯の変化が再び生じ、神経の通り道が狭くなることがあります。数年後に、以前と似た間欠性跛行やしびれが現れます。

隣接椎間障害

固定術を行うと、固定した部分の上下の椎間に負担が集中し、新たな狭窄や不安定性が生じることがあります。長期的な合併症として知られています。

インプラントのゆるみ・偽関節

スクリューがゆるんだり、骨がうまく癒合せず偽関節となったりすると、腰の痛みが続くことがあります。骨粗鬆症がある場合に起こりやすくなります。

症状の原因が脊柱管狭窄症ではなかった場合

股関節の変形や末梢動脈疾患、糖尿病による神経障害でも、よく似た症状が現れます。この場合は狭窄症の手術では改善しません。

再手術が初回より難しい理由とリスク

一度手術をした部位は神経のまわりに瘢痕組織ができて癒着しているため、神経を傷つけずに剥がす操作に慎重さが求められます。そのぶん硬膜損傷や髄液漏、出血、感染といった合併症の危険性は初回より高くなります。

また、神経の圧迫が長期間続いていた場合は、圧迫を取り除いてもしびれや筋力低下が完全には戻らないことがあります。10年間追跡した調査でも、追加の手術を受けた方は受けなかった方より症状の改善が小さかったと報告されています(文献3)。

こうしたリスクがあるからこそ、再手術は原因がはっきりしていて手術で取り除ける状態かを見極めたうえで行います。手術以外の方法も含めてご説明しますので、まずはご受診・ご相談ください。

2回目・3回目の手術はできるのか

手術の回数そのものに、一律の上限はありません。3回目以降の手術が行われることもあります。

ただし判断の基準は回数ではありません。現在の症状の原因が画像所見と一致しているか、その原因が手術で取り除けるものか、骨の質や全身の状態が手術に耐えられるかといった点を、あわせてみていきます。

回数を重ねるほど癒着は強くなり、骨を削る範囲が広がって不安定性が増すこともあります。可否は診察と検査のうえで判断します。

再手術以外の選択肢

症状が戻ってきたからといって、すぐに再手術が必要になるわけではありません。程度によっては、薬物療法、神経ブロック注射、リハビリテーションで日常生活に支障のない状態を保てる場合があります。

他院で手術を受けた方の再評価と、当院で行う再手術

他院で手術を受けたあとに症状が続いている方も、当院の脊椎センターでご相談いただけます。前回の手術で何が行われ、今の症状がどの原因によるものかを整理するところから始めます。

受診の際にお持ちいただきたいもの

これまでに撮影されたMRIやCTの画像と、手術の内容がわかる書類(診療情報提供書や手術記録)をお持ちいただくと、どの部位にどのような手術が行われたかを踏まえて評価できます。画像はCD-ROMなどの媒体でお持ちください。お手元にない場合も、まずはご受診・ご相談ください。

当院で行っている再手術

症状の原因に応じて、狭くなった部分に対する除圧の追加、固定範囲の延長、ゆるんだインプラントの入れ替えや抜去などを行っています。骨粗鬆症を伴う場合は、骨の状態を評価したうえで治療方針を検討します。

セカンドオピニオンをご希望の方へ

現在の治療を続けながら、今後の見通しについて別の医師の意見を聞きたいという方にも対応しています。診察の結果、手術をお勧めしないという結論になることもあります。

よくある質問

Q. 脊柱管狭窄症の手術後、どのくらいの人が再手術になりますか。
公表されている調査では、5年で約14%、10年で約23%と報告されています。症状が再び現れた方が全員再手術になるわけではありません。
Q. 手術を2回、3回と繰り返すことはできますか。
回数に一律の上限はありません。ただし回数を重ねるほど癒着が強くなるため、原因が手術で取り除けるものかを見極めて判断します。
Q. 手術をしたのに症状が治らないのはなぜですか。
同じ部位の再狭窄や隣接椎間障害のほか、原因がそもそも脊柱管狭窄症ではなかった場合もあります。画像検査で確認します。

出典

  • 文献1 Kim CH, et al. Spine J. 2013;13(10):1230-1237.
  • 文献2 Ulrich NH, et al. JAMA Netw Open. 2022;5(7):e2223803.
  • 文献3 Chang Y, et al. J Am Geriatr Soc. 2005;53(5):785-792.
  • 文献4 Machado GC, et al. PLoS One. 2015;10(3):e0122800.